ストロベリームーン
「最近急成長の新しい形のビジネス。CEOの 稲田リョウさんはアメリカのスタンフォード大学でMBAを取得した超エリート。ヘぇ、頭いいんだ」
まさかリョウが盗みに入った?
そういえばリョウはケチな男だった。
あの腕時計は相当値の張る物のはずだから、あのドケチなリョウだったらやりかねないかも知れない。
でも元々はリョウの物なのだから璃々子に連絡してくればいいだけの話ではないか。
コソコソ盗みに入らなくても。
でもリョウは璃々子の部屋の鍵は持っていない。
どうやって入るんだ。
それに仮にリョウだとしても、あの腕時計を忘れて行ってからしばらく経つ。
今になってなぜ?
璃々子は忘れていった腕時計にすぐ気づいたが、うっかりリョウに言い忘れて、そのうちに別れてしまった。
リョウが腕時計について何も言わなかったので、リョウは時計を璃々子の所に忘れているのだと気づいてないのだと璃々子はずっと思っていた。
璃々子も別れ際癪だったので、腕時計のことは黙ったままだった。
こんなことになるならさっさと売って現金にしておけばよかった。
それにしてもこのリョウの腕時計が気になる。
「ねぇ、璃々子さんったら」
世那に肩を叩かれる。
「さっきから怖い顔してどうしたんですか?」
「このリョウがしてる腕時計がなくなった腕時計なの」
「えっ」
世那の目が大きくなる。
小春は何も知らないようで「なに?なくなった腕時計って」とのん気だ。
世那が小春に説明する。
その間も璃々子はじっと雑誌を覗き込む。
「でもその腕時計が璃々子さんの寝室からなくなった腕時計と同じだと言う証拠は?」
世那の話を聞き終わった小春はちょっといいですか、と璃々子から雑誌を受け取る。
璃々子がそのモデルはもう市場に出ていないと言うと小春はう〜んと首をかしげる。