その瞳は、嘘をつけない。
署に戻り、タバコの代わりのコーヒーを取りに給湯室へ行ったが、生憎コーヒーメーカーは空だった。
面倒くせぇ・・・。

仕方なく新しいコーヒーフィルターを入れるべく棚をあさっていたら、背後から声をかけられた。
「一之瀬さん、それ、私やります!」

いかにも新人風の、威勢のある声。
「あぁ、悪いな。」
こいつ、名前は何だったかな。
ショートカットに、身長は実加と同じくらい。
警察学校を出て、つい先月配属されてきたばかり。
高卒と言っていたから、俺より10歳以上下ってことか?
若いのが入ってくる度、自分も年を取ったなぁと思い知らされる。
こいつから見ても、俺は完全におじさんの部類に入るんだろうな。

刑事部屋に戻るのも面倒なので、コーヒーが入るまでここにいることにした。
実加に連絡でも入れておこうと、携帯を取り出す。
昨日あんな状態で実加の家を出てきておきながら、メッセージすら送っていない。
実加からも来ていない。
きいっとあいつは、俺がしない限り連絡してこないだろう。

「一之瀬さん、彼女さんにメールですか?」
「!?」

携帯を弄っていただけで何故そんなことが言えるんだ?

「図星ですね!
一之瀬さんの表情が一気に柔らかくなったから、そうかなって。」

つい最近まで女子高生だったやつに簡単に見抜かれる程、たるんだ顔をしていたのだろうか・・・・。
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