その瞳は、嘘をつけない。
「一之瀬さん、お疲れさまです。
課長が、戻ったら話があると言っていましたよ。」

マグカップを片手にデスクに戻ると、隣の席の後輩に声を掛けられる。
たった1杯のコーヒーとチョコレートにすらなかなかありつけない今日は一体なんなんだ・・・。

「課長か・・・サンキュ。」

果たして課長に呼び出しを受けるような何かをやったのかと考えてみるが、心当たりが全くない。

さっさと済ませてしまおうと課長の元へ行くと、ここでは何だから会議室で、と移動を促される。
ミスをしたつもりも無く、転勤にしては時期はずれだ。

「そんなに硬くならなくて良いよ、個人的な話だから。座ってくれ。」
「失礼します。」
50の半を過ぎた辺り、ちょうど親世代ともいえる課長。
叩き上げの人で、温厚な雰囲気を漂わせているが、眼光が鋭い。
取調をする時はかなり手荒だと聞いたことがある。

そして俺は、
今夜行くから、と実加へ送ったメッセージの約束を果たせなくなることとなった。

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