その瞳は、嘘をつけない。
年末のこの時間の電車は忘年会帰りの人で混んでいて、電車の窓越しにも、反対ホームにいる人なんて見えるような状態ではなかったけど、それでも、ちょっとでもあの2人から離れたかった。
発車音が鳴り響く中、混雑するホームを走り、先頭車両に乗った。
ここなら、電車が発車してもあの2人の前を通らなくて済む。

心臓がバクバクしていて、気持ちの悪い汗が流れ落ちてくるのは、
決して走ったことが原因ではない。

耕平の時もそうだったけど、同じ町に住んでる以上、避けられないこと。
私がこの時間に電車に乗ることなんてない。
秀くんならそんなこと知ってる。
だから油断したんだろう。

頭がぐるぐるしてくる。
電車の中の暖房が息苦しい。

いっそどこかへ行ってしまいたい。
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