その瞳は、嘘をつけない。
昨年末は秀くんのご実家へ。

秀くんのお父さんにも初めてお会いした。
どちらかと言うと寡黙な方で(というか、お母さんと優さんがパワフル過ぎて話す隙が無いような。)、温厚そうな方だった。
一之瀬家で猫を飼い始めたのも、お父さんが猫が好きだから。
怒らせると怖い、と秀くんは言っていたけど。
「怒らせたことあるの?」
「ガキのころはしょっちゅう。」
「秀くんが子供の頃の話、聞きたいな。」
「俺じゃなく母親に聞け。3日くらい潰せるぞ。」

1泊の滞在だったから詳しいエピソードまでは聞かなかったけど、
小さいころの秀くんは意外にも泣き虫で引っ込み思案だったらしい。
そしていつも、妹の優さんと一緒にいたらしい。
「頼んでもいないのに、いろいろお世話してくれてたよねーお兄ちゃん。」
「煩い。」

近くに住んでいるという、秀くんのおじいちゃんとおばあちゃんの所へも挨拶に伺ったんだけど、
丁度、叔母さんやら伯父さんやら親戚の方たちがたくさん集まっていたタイミングで伺ってしまい、
「秀が女の子を連れて来た!!」
とすっかり盛り上がってしまい、
そして気づけばしっかりお嫁さん扱いされていた。
秀くんもあえて否定はしていなかった。
「しても聞いてないだろう、あの人達。」

親戚の方たちも近くに住んでいる人が多いらしくて、堅苦しくない、気軽な付き合いだ、と秀くんは言っていたけれど、
その通り皆さんが気さくで優しくて、
本当に秀くんの親戚?と思ってしまったことは内緒。

大晦日には街に戻り、私の部屋で、2人で年を越した。
除夜の鐘が鳴っていることにも気づかないくらい
2人だけの、親密な時を過ごした。
< 192 / 218 >

この作品をシェア

pagetop