その瞳は、嘘をつけない。
「・・・あ。」

本を読んでいるので、やや俯き気味の横顔だけど。
多分、間違いない。

「実加ちゃん、見たことあるお客さん?」
「ええと、お客さんとしては初めてかな。」
「なになに?知り合い?」
「さっき話した、合コンの人。」
「え!じゃあ、ポリスマーンだね!」
「ポリっ・・・うん。」
「実加ちゃん、連絡先、聞いてきてよ!」

無茶言わないで欲しい・・・。

そもそも、私の事なんて覚えてないんじゃないかという疑問もある。
美人でも可愛いわけでもないし。会話が盛り上がったわけでもないし。

「そんな、話かける用事があるわけじゃないし・・・無理だよ。」
「用事がないなら作る!!どうせお客さん少ないし、このチョコレートケーキ切って試食に出しちゃおうよ!他のお客さんんにも出せば問題ないでしょ。」
「映見ちゃんがあの人のところに持って行ったらいいじゃない。」
「面識ないのに私が連絡先なんて聞いたら不審者・・・ていうかただのナンパになっちゃうよ。はい、行ってらっしゃーい!」

気づけば小皿に載せた、切り分けられたチョコレートケーキを持たされていて、彼に向って歩き出すしかない状況になっていた。
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