その瞳は、嘘をつけない。
「おはよう。」
寝起きの、ちょっと掠れた声しか出ない。
こういうところ本当に可愛くないな、私。

「あぁ、おはよう。もう少し寝てても良いんだぞ?」
「ううん、せっかく秀くんいるから起きる。」

ふっと、片側の口角だけ持ち上げて微笑んで立ち上がって私の向かいに来て、ふわりと抱きしめられた。

「悪いな、お前が起きるまで隣にいてやれなくて。」

あぁ、そっか。
なんとなく頭が重くてイライラするのは、目が覚めた時に隣に秀くんがいなかったからなんだ。
自分でも気付かなかったようなモヤモヤもあっさりと見抜かれたことによって消失し、代りに気づいてもらえた満足感が心を満たす。
どうしてこんなにも、分かってくれるんだろう。

「ううん。秀くん忙しいから。」
彼の肩のくぼみに頭を預けてもたれ掛かる。
指の長い大きな手で頭を撫でてくれる。
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