もう一度、愛してくれないか

「あ…あのう……失礼を承知でお尋ねしますが」

豊川はますます青ざめた顔で、おずおずと口を開いた。

「昨日……専務が梅田で目撃されてるんです」

あぁ、確かに行ったからな。

「それで……」と言う豊川の声を遮って、

「専務、こちらを見て下さい」と、興戸 玲央名(れおな)が自分のPCのディスプレイを指し示した。

【 To 玲央名さま
本日、1:12 pm、メンズ館にて、
専務を目撃しましたので、ご報告します。】

おれが、セミロングの黒髪の女性と下着を買っている写真が添付されていた。

そして、「続いて、こちらをご覧下さい」と、
七条 祇子(のりこ)が自分のPCのディスプレイを指し示した。

【 祇子様
本日、午後二時三十六分、ヘップの観覧車にて、
専務の御姿を見かけました由、御報告申し上げます。】

おれが、セミロングの黒髪の女性と「恋人つなぎ」をして、観覧車から出てきた写真が添付されていた。

さらに、「こちらが決定的な物的証拠です」と、
鳴尾 志麻(しま)が自分のPCのディスプレイを指し示した。

【 志麻姐さん
本日、午後3:07、東◯の奥にて専務を視認。
直ちに報告致します。】

おれが、セミロングの黒髪の女性の肩を抱いて、ラブホへ入る写真が添付されていた。

おそらくスマホで撮られたものだろうが、いずれも表情までばっちり写っていた。

< 104 / 200 >

この作品をシェア

pagetop