もう一度、愛してくれないか

「それらの写真に写っている女性は……」

スリートップと豊川が身を、ずいっ、と乗り出した。

「……おれの……嫁だ」


なぜか「妻」でも「家内」でも「カミさん」でもなく、ご当地では定番の「嫁」という言葉を使っていた。

前傾姿勢のまま「はぁ⁉︎」と、社内でも見目麗しいとされる一同が、世にもマヌケな顔になっていた。ご当地の言葉では「けったいな顔」とでも言うのかな?


「うちらをナメとんのかっ⁉︎ この期に及んで、そないなウソ、よう平気でつけるなぁ⁉︎」

と、興戸。

「ドタマかち割ったろかっ!ぁあっ⁉︎
どう見てもこの女ぁ、三十後半やんけっ‼︎」

と、七条。

「キャラ忘れとうで、七条。
……『洛中☆京女連合』の総長時代に戻っとう」

と、鳴尾。

豊川はいろんな意味で、わなわなと震えるしかなかった。どこからか、♪ パラリラ、パラリラ〜という音とともにバイクのエンジン音の幻聴もしてきた。

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