もう一度、愛してくれないか
あのお嬢さんたちが仕事をしてないと、伊東や豊川は思っているが、決してそうではない。
あさひ証券の大阪エリア限定の総合職は、関西で「三女」と呼ばれる女子大出身者が多い。
入社五年目、奇しくも同期入社の興戸・七条・鳴尾は「スリートップ」と呼ばれ、それぞれの女子大出身者から入社年度関係なく、絶大なる人気を誇っている。
女子社員たちの間のトラブルは厄介だ。
寿退社は仕方ないが、研修や配属先での実地経験でせっかく戦力になった社員を、そんなことで退社に追い込んでしまったら、今まで育ててきた労力もコストも水泡に帰す。
だが、スリートップはどこからともなくトラブルの情報を聞きつけ、早速「トップ会談」を行い、あっという間に「手打ち」するらしい。
そうなると、スリートップと同じ学閥なら従うのはもちろん、学閥から外れたマイノリティでも聞かざるを得ない。
実際、大阪エリアは他地域に比べ、圧倒的に女子社員の退職者が少ないのだ。
これは、管理職として誇るべきことである。