もう一度、愛してくれないか

『……専務、今回のことでは本当(ほんま)に、奥さんにお世話になりました』

伊東が殊勝な声で言った。

『おかげでうちの家族は、バラバラにならんとやっていけます。家族が力を合わせることで絆になる、っていうのがようわかりました。
……本当(ほんま)に、ありがとうございました』

スマホの向こうで、頭を下げている気配がした。

……おまえ、もしかして、おれにバレたからって、紗香を棄てる気じゃねえだろうな⁉︎

すると「ちょっとアンタ、貸しっ」と言う声とともに、ガサガサッと音がして、

『専務さん、伊東 大輔の母の「凌牙」でございますぅ。いつも息子がお世話かけておりますぅ』

典型的な関西のオバチャンの声が聞こえてきた。

……もうバレバレの「小芝居(コント)」はいいから。

確か伊東の母親は、演歌に出てくるような「河内女」だと言ってたな。

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