もう一度、愛してくれないか
♤Chapter 16♤
そもそもは、姉の清香に連れられて行ったのがきっかけだったそうだ。
紗香は、そこへ初めて足を踏み入れたとき、
……世の中には、こんなキラキラした世界があったんだぁ。
と、感動のあまり心の底からうち震えたらしい。
そして、たちまちのうちに、まるで少女小説や少女マンガから飛び出してきたような、茶髪や金髪のカッコいい「男」たちに魅了されてしまった。
見事にハマッて、同じ月に何回も足繁くそこへ通ったという。
「……あたし、寂しかったんだな、って初めて気づいたの」
紗香はそう言って、目を伏せた。
「そこにいるときだけ、今の現実を忘れて、学生時代に戻ったかのように、満たされた幸せな気持ちになれたの」
今まで夫のいない東京で、一人で奮闘しながら、
一人息子の大地を育ててきた。
だが、やがて大学生となり、そして今春からは社会人となった大地は、いつの間にか母親がいなくても適当にやれるようになっていた。
(まぁ、まだ家政婦のように、母親を都合よく使おうとは思ってるみたいだが。
今日からの「合宿」では、担当者に何回も思いっきりシゴくよう発破かけてあるからな。
……思い知れよ、大地)