もう一度、愛してくれないか
♤Chapter 17♤
「……薄々、気づいてたの」
紗香は思いつめた顔をして、くちびるを震わせていた。
……なんの話だ?
おれは、確か『頑固な亭主をどうやって説得できたんだ?』って訊いたんだよな?
それがどうして「おれが会社の子と浮気した」って話になるんだ?
「あたし、前々から凌牙さんに、あなたのことを相談していたのよ」
紗香の両目には、今や涙がぷっくりとこぼれんばかりになっていた。
「ちょっと、待て。落ち着け。
……いったい、何のことを言ってるんだ?」
おれはあわてて、紗香の華奢な肩に腕を回した。
紗香はぶんっ、と身体を振っておれの手を振りほどいた。その拍子に、両目から、ぽろぽろぽろ…と涙があふれてこぼれた。
「……紗香?」
「だって……真也さん、東京のおうちに帰ってこないんだもん」
そう言うと、えっ…えっ…えっ…と、まるでちっちゃな女の子のように声を上げて泣き出した。