もう一度、愛してくれないか
「そもそも、こんなに転勤が多いのも、あたしなんかと結婚しちゃったからだしね。
……なのに、今まで大地にかまけてて、妻らしいこと全然してこなかったもんね」
紗香は気弱に微笑んだ。
もうかなり、感情の昂りは治まってきたかな。
……なに言ってんだ。そんなこと、あるわきゃねえだろうよ。
どうしてもおまえと結婚したいおれが、おまえを無理矢理かっ攫ったんじゃないか。
それに、おれの子を産んでくれたばかりか、ほとんど一人で育てて社会人にしてくれた。
「凌牙さんにもこんなふうにグチったら、『サーヤの良さを、ダンナに再確認させればいい』って言ってくれたの」
……いやいやいや。
再認識もなにも、初めからちゃんと「認識」してっから。
それで、紗香は大阪での生活に「潤い」と「癒し」を与えるため、季節を感じさせる小鉢などのテーブルウェアやムーディーな雰囲気を醸し出すアロマランプを買ったんだそうだ。
「真也さんは、接待や会食などで外食ばっかりだろうから、お料理がんばろうと思って。
今のところは会社の健康診断で異常なしだけど、歳も歳だから」
だから、なにか食べに行こうと言っても、うちでつくってたんだな。
さらに紗香は、かわいいルームウェアとその下に着けるさりげなくセクシーなランジェリーも用意した。
「あぁ、あの薄紫のブラとショーツだな?
あれはおまえにすんごく似合ってて、すんげぇ煽られたぞ」
思わず口を挟むと、もの凄い目で睨まれた。
どうやら、まだ早かったらしい。
「……アロマランプのオイルだって、イランイランにしたのよ」
なんと、催淫効果のある香油らしい。
そういえば、中東のハーレムで香ってそうな、あのスパイシーでオリエンタルな匂いに誘われて、紗香を抱きたくなったんだったな。
……あくまで「個人の感想」だが。