もう一度、愛してくれないか
リボンを解き、包みを開いて出てきたのは、ヴァン・クリーフ&アーペルの若草色のケース。
ぱかっと開けて、その中にあったのは……
「……うっわぁ……キラッキラッしてる」
見つめる紗香の瞳が、潤んで揺らめいた。
「左手、出せよ」
おれは、紗香の左手薬指にすでにある結婚指輪の上に、それを通した。
「わっ……すっごい……サイズぴったりっ」
そりゃそうだ。
リングゲージとかいうのを借りて、おまえがぐっすり寝てたら起きないのをいいことに「堂々と」測ったんだからな。
「このタイプはサイズ直しできない、っていうもんね。もうこれから太れないわね」
紗香はそれを見ながら、ふふっ、と笑った。
彼女の左手薬指で新たに輝いているのは、ヴァン・クリーフ&アーペルのロマンス・エタニティリングである。ダイヤモンドがリングの周囲を三六〇度とり巻いていて「永遠の愛」をあらわしている。切れ目なくダイヤが連なっているため、原則としてサイズ変更できないそうだ。
最近では結婚指輪に使われるらしいが、本来は結婚後の記念日に「いつまでも変わらぬ愛」として送るものだ。
三・二ミリとやや太めのタイプの方にしたが、指のサイズが四六と細い紗香であっても、ある程度年齢を重ねた手には、やはりこのくらいの太さがしっくりきていた。
「……真也さん、ありがとう。
いつかはエタニティリングがほしかったのよ。
それに、大好きなヴァンクリだし。
ものすごーく、うれしいっ!」
紗香が満面の笑みで、おれを見つめた。
エタニティリングとマリッジリングが収まった紗香の左手には、ヴァンクリのアルハンブラ・スモールモデルの時計が手首にあった。
また、彼女の首元には同じシリーズのヴィンテージ・アルハンブラのペンダントが煌めいている。
二つとも、シンプルな白蝶貝があしらわれていて、紗香のいつまでも変わらぬ清楚な雰囲気によく似合っていた。
もちろん、おれが今までにプレゼントしたものである。
おれと結婚しても、紗香に実家でいた頃と変わらず、満ち足りた生活をしてもらえるように、ただそれだけを思って、たとえ「参勤交代」生活であろうとも、今まで身を粉にして働いてきたのだ。