もう一度、愛してくれないか
「バカだな。なんでそんなうれしいこと、もっと早く言わないんだよ?」
紗香の艶やかな黒髪を撫でて、ちゅっ、とキスをした。
「何度もあたし、言いかけたのよ。
……でも、いつも真也さんが遮るんだもん」
紗香がぷう、っと頬を膨らます。
あまりにかわいすぎて、その頬にちゅっ、とキスをする。
「すまん……おれが、悪かった」
おまえが真剣な顔をして、深刻そうな言葉で切り出すから、つい不吉な話だと思っちまうんだよ。
……紛らわしい。
「あたし、今回は『覚悟して』大阪に来たのよ」
……ほら、それだよ。
そうやって、また、大仰な言い方をする。
「だって、東京にある今シーズンのお気に入りの服とかバッグとか靴とかを、こっちに送っちゃったんだもん」
「あっ……それが、あのダンボールか?」
ウォークインクローゼット代わりにしている部屋に鎮座ましますダンボールが目に浮かんだ。
「とっとと整理しろよ。シワになる服もあるんじゃねえのか?」
「だって、収納するスペースがないんだもの」
確かにクローゼットはおれの服でいっぱいだった。
「だから、早く言えってんだよ。
明日、早速、収納する家具を買いに行こうぜ」
「えっ、いいの!? うれしいっ!」
紗香が満面の笑顔になった。
なんだか、同棲を始めるカップルみたいだな。
この歳になって、こんな初々しい気持ちをまた味わえるとは。