もう一度、愛してくれないか
「ええっ、そんなことができるのっ⁉︎」
紗香の顔がぱーっと晴れやかに輝いた。
まるで、大好きなタカラヅカの話を語っている時のようだ。
「あぁ、おまえが望むなら、どんな手を使っても、あの子を必ず、大地の嫁にしてみせる」
おれは自信たっぷりに言い切った。
一応、あのとき「本人」には、
『そうだ、お嬢ちゃん、うちのガキの嫁さんになってくれよ。そしたら、おじさんもきみの「おとうさん」になれるからさ』
と「申し入れ」したしな。
彼女はまだ、小学生になったばかりの歳だったが……
思えば、おれの趣味はゴルフ、紗香はタカラヅカで、おれたちには「共通の趣味」がない。
とりあえず、このことがお互いに大いに興味を持って語り合える「共通の話題」になることは間違いない。確か田中の娘は現在、高校生くらいになってるはずだ。
……このネタで、紗香と数年は楽しめるな。
そのために、一人息子の人生が多少ひん曲がったとしてもなんだというのだ。
おれはそんなことよりも、愛しい「嫁」の喜ぶ顔が見たいのだ。
「……楽しみねっ! わくわくするわっ‼︎」
紗香の瞳が、今日プレゼントしたヴァンクリのエタニティリングのように、きらきらと煌めいている。
……あぁ、なんてかわいい。
「紗香、愛してるよ」
おれはベッドの隣で横たわる、愛する嫁を引き寄せて、ちゅっ、とキスをした。
「あたしも……真也さんのこと、愛してる」
紗香もおれに、ちゅっ、とキスを返してくれた。
……当然、キスだけでは、終わらないけどな。