もう一度、愛してくれないか
Prologue
JR大阪駅に隣接するグランフロントの、数々の有名企業が入居するタワーAに、あさひ証券大阪支社はあった。
中でも秘書室は「大阪エリア限定の総合職」の女子社員にとって憧れの職場である。
……なのに。
下界のスタバから天空のオフィスに戻ってきた豊川は、重いため息を吐いた。
デスクにいた三人の女子社員が、一斉に振り返った。
「「「遅かったやん、豊川!」」」
「す…すいませんっ」
豊川はコメツキバッタのごとく、それぞれに謝った。そして、緑のロゴ入りの茶色いペーパーバッグから、申しつけられたブツを取り出す。
帰国子女で読モのように華やかな興戸には、ノーファットのキャラメルマキアート。
お姫さんみたいに嫋やかな七条には、ミルクをソイに差し替えた抹茶ティーラテ。
姐御肌風でクールビューティな鳴尾には、ショットを追加したエスプレッソ。
一仕事終えた豊川は、自分のデスクに戻った。
そこには、席を外した間に持ち込まれたであろう書類が、うず高く積まれていた。