もう一度、愛してくれないか

ところが。

『上條、おまえと紗香の結婚は絶対に許さない』と、社長から言われたのだ。

姉の清香が「恋愛結婚」なので、妹の紗香には会社のために、なんとしても政略結婚してもらう、ときっぱり告げられた。

何度も頭を下げて結婚の許しを乞うたが、聞き入れてもらえなかった。おれは本店から沖縄支店に飛ばされ、遠距離恋愛になった紗香が不安になって、家出騒ぎを起こした。

その結果、おれはとうとう会社を辞めて、紗香をかっ(さら)う決意を固めた。

他社からヘッドハンティングの話がちらほら来ていたから(沖縄支店でも相変わらず全国一のトップセールスを死守した)、紗香をじゅうぶん養っていけると思った。

世間知らずの紗香は『わたしもパートで働くっ!』と喚いていたけれど。

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