もう一度、愛してくれないか

そんなとき、動いたのは会社の重役たちだった。
おれが辞表を出してライバル会社へ転職するかもしれない、と聞きつけたらしい。

突如、役員会議が開かれ、重役たちが社長解任の緊急動議をチラつかせ、おれが流出するのは会社にとってこの上ない痛手となるから、社長に結婚を承諾するよう迫ったのだ。

そういうわけで、社長は渋々、紗香との結婚を承諾してくれ、結婚準備もあっておれは沖縄支店から東京の本店に戻ってこられたのだが、結婚式の後ハネムーンから帰ってきたおれたちを待っていたのは。

【本店 営業部 営業課長 上條 真也殿
七月一日付で、網走出張所 所長を命ずる】

という辞令だった。

……あばしりぃ?
うちに網走出張所なんてあったっけ?

と思っていたら、人事部長自らすっ飛んできた。

『上條、すまん。社長の妄想が暴走した。
正しいのは……こっちだ』

息を切らしながら、辞令を渡してくれた。

【本店 営業部 営業課長 上條 真也殿
七月一日付で、札幌支店 営業部長を命ずる】

……一応、栄転ではあるが。
役員会で顔を潰された社長が黙ったままでいるはずがなかった。

そのときから、一年ごとに転勤する「参勤交代」生活が始まったのだ。

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