もう一度、愛してくれないか
「……悪い。こっちにはストックがないんだ」
おれは渋い顔で呻いた。
だからといって止めたくないから、右手の指先は彼女のなかで動かしたままだ。
一瞬、えっ?という顔をしたが、すぐに何のことだかわかったみたいで、「あぁ」と言った。
さすが、二十年以上も夫婦をやっているだけのことはある。
「……いいのよ、もう」
熱い吐息で、彼女は言った。
「えっ、いいのか?」
……二月以来なのに、こんな中途半端で?
おれは絶対イヤだぞ。生殺しじゃないかっ。
「そうじゃなくてっ……もう、着けなくていいから」
どうやら、彼女も「中断」には不本意らしい。
それにしても、「着けなくていい」って。
……避妊しなくてもいいって、どういうことだ?
えっ、ちょっと待てよ。それってもしかして。
おれの指が止まった。
「おまえ……上がったのか? 更年期か?」
今まで上気したピンク色の頬で色っぽくおれを見つめていた妻が、すーっと顔色を青ざめさせた。
「さ…最低……っ!」
心底、軽蔑しきった冷たい目で見られた。
……どうやら、地雷を思いっきり踏んでしまったらしい。