もう一度、愛してくれないか

「ま…まだ、上がってないわよっ。
……ただ、月経(アレ)の間隔がだんだん短くなってるから、もう子どもができることはないかな…って」

むすっ、とした顔で妻は言った。

「すまん、おれが悪かった。許してくれ」

おれは必死で謝った。

……いくら三十後半に見えるったって、アラフィフだもんな。

ちょっと、感慨深くなる。


「……あたしのこと、もう女として見られないでしょっ」

彼女がぷいっ、と横を向く。

「そ…そんなこと、あるわけないじゃないか。
むしろ、うれしいよ。ナマでできるんだから」

「妻」という生物は、夫に対してはエスパー並みの超能力を発揮するのだから、読み取られたら困るような迂闊なことを考えてはいけない。

「……『胎内(なか)』でだって出していいんだろ?」

おれは彼女の柔らかな髪を(もてあそ)びながら、耳元でささやく。

おれの声は低くてよく響くらしい。
彼女はまだ横を向いたまんまだが、頬をぽっ、と赤らめた。

おれはすかさず、着ていたパジャマ代わりのTシャツを脱ぎ始める。忙しいにもかかわらず、ジム通いで鍛え続けている引き締まった上半身があらわになる。

そもそも、おまえを抱けない夜に気を紛らわせるために、夜中でもやってるジムに入会したんだぞっ。

「……紗香」

ここぞ、というところで名前を呼んで、頬を撫でる。少し、甘えるような声でねだる。

「紗香が……最後までほしい」

「……もおっ!ずるいっ」

紗香がおれを見て、抱きついてきた。

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