もう一度、愛してくれないか
「……ちょっとぅ、興戸さん?」
七条がお公家さんのような声を発する。
「なんや先刻から爪ばっかし見たはるけどなぁ。そんなにヒマやったら、豊川ちゃんの溜まったお仕事、手伝わはったらどない?」
確かに興戸はキャラメルマキアートを飲みながら、昨日南堀江のネイルサロンで施したばかりの美しい爪をうっとりして眺めていた。
……七条さんっ!な、なんてことをっ⁉︎
豊川はムンクになった。
「アンタに言われとうないわっ。
七条かて、先刻から仕事もせんと、雑誌ばっかし読んどるやんっ」
確かに七条は抹茶ティーラテを飲みながら「あまから手帖」をめくり、今度どのお店に行こうか思案していた。
……いやいやいや。
お二人の間に亀裂が入るくらいなら、この豊川が残業してでも一人でやらせてもらいますっ!