もう一度、愛してくれないか
「ほら、今、妻が夫の年金を折半できるようになったらしくて、定年退職の前後に突然離婚したいって言い出す主婦が増えてるそうですよ。
子育ても一段落して『これからは、自分のために生きたい』って言うて」
「おおっ、うちのオカン、まさしくそれやっ!
同しこと言うとったわ!」
豊川の言葉に伊東が激しく同意する。
……熟年離婚?なんだそりゃ?
おれの眉間にシワが寄る。
「年齢的に言って専務と近いんで、ちょっと相談に乗ってもらおうと思うたんっすけど」
伊東がおずおずと言う。
「相談にはいくらでも乗るけどな。だけど、おれは男だからなー。親父さんの気持ちはわかっても、おふくろさんの気持ちは理解できるかなぁ?」
おれが腕を組んでそう言うと、
「専務は、オンナゴコロをちゃーんと理解したはりますよぉー。あのややこしいスリートップの皆さんを、バッチリ『制御』したはるやないですかー」
豊川が無邪気に笑った。
……いやいやいや。
この時間もまた三人揃って「乙ゲー」とやらをやってるんじゃないのか?