もう一度、愛してくれないか

リビングの家具類は、北欧家具専門のセレクトショップで求めた、妻の好きなフレデリシアで揃えてある。

妻に教えてもらうまで知らなかったが、デンマーク製の家具の椅子はセクシーなまでのカーブで、座り心地のフィット感が抜群だ。


おれは四人掛けの真っ白なダイニングテーブルの、妻の隣の真っ黒な椅子に座ろうとした。
すると「前に座って」と阻止される。

対面での話というのは「対決姿勢」を示す。

紗香……おまえ、営業のプロのおれと、
……ガチで話をするつもりか?

おれは仕方なく、真正面の椅子を引く。
先刻(さっき)までの柔らかいカウチソファとはまるで違う、硬い材質のスタッキングチェアだ。

どかっ、と座って、持て余しそうなくらい長い脚をひらりと組む。(自分で言うのもなんだが、本当のことだから仕方ない。)

残念ながら息子には抜かされたが、おれの身長は一七七センチだ。
さすがに威圧感を感じて畏れをなしたのか、一五六センチの妻はごくっと唾を飲んだ。


……ほら、言わんこっちゃない。

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