もう一度、愛してくれないか
「……アンタら、ええ加減にしときや」
新聞をデスクに据え、赤いペンを右手に、エスプレッソを左手にしていた鳴尾が、ハスキーな声で二人を制す。平日でも開催されている園◯と西◯と尼◯に関連したアグレッシブなスポーツを、ローテーションして楽しんでいた。
鳴尾は神戸が関西であることはおろか、兵庫県であることすら認めようとしない、生粋の「神戸っ子」である。
しかし、実は神戸市ではなく、藤◯◯香と同じ兵庫県◯宮市で生まれ育った。
だから、本当は彼女同様、全然「神戸っ子」ではない。(ちなみに、神戸市と◯宮市に挟まれた芦屋市の者は「神戸出身」とは決して言わない。「芦屋出身」だと「正しく」名乗る。)
だが、それを指摘したら翌朝ポーアイと神戸空港の間の海にぷかぷか浮かんでいるかもしれないため、黙っておいた方が賢明だ。
豊川は突如現れた「救世主」に大感激していた。
……あぁ、さすが、姉御肌(風)の鳴尾さんっ!
「そんなこと、しとうヒマあるんか?
アンタらのも、もう始まりようで」
鳴尾は左手首にあるボーイズサイズでステンレススティールとゴールドのコンビの、ロレックス オイスターパーペチュアルで時刻をちらりと確認した。
そのあと、興戸と七条をじろり、と睨んでから、今度はPCに目を移す。
……姐さん、ハンパない目力なんですけど。
背後にうっすらと菱形のマークが見えるんですけど、気のせいですよね⁉︎
豊川は違う意味でどきどきする。