もう一度、愛してくれないか
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


ゴルフのプレイ中は、ずっと小雨が降り続いていた。梅雨時だから、仕方ない。土砂降りでないだけ、ありがたいくらいだ。

必要以上に雨に濡れたくないから、一緒の組で回るヤツらはみんなプレイファストだ。
こっちに住んでいる、W大の同窓ばかりにしてくれていたから、気心が知れた連中と楽に回れた。

ラウンドを終えて、速攻で風呂に入って濡れて冷えた身体(からだ)を温めたあと、コンペ会場へ移る。順位の発表だの、賞金・賞品の贈呈などがだらだらと続く。

ゴルフは好きだ。会員権(ホームコース)もいくつかあるし、もちろんハンディキャップは片手シングルだ。

ホームでクラブチャンピオンを取った時には、BSジャパンの「ゴルフ侍」というアマチュアがシニアプロとガチで対決する番組に『出ろよ、おまえなら勝てるんじゃないか?』と周りから本気で勧められた。

だから、いつもなら同じテーブルのヤツらとラウンドを振り返って「あそこはあーすりゃ良かった」「違うよ、こーすりゃ良かったんだよ」「いや、やっぱ新しいクラブがいるな」などと、ゴルフ談義に花を咲かせるのだが。


今日は、

……早く終われっ!

と、司会者に念を飛ばしまくっていた。

とにかく、早く帰りたかった。
妻のいる、あの中崎町のマンションに。

……紗香に会いたい。

イライラしながら、何度も左手首のオーデマ ピゲ ロイヤルオークに目を遣る。

彼女の顔を、一分一秒でも早く、見たかった。

< 67 / 200 >

この作品をシェア

pagetop