もう一度、愛してくれないか
♤Chapter 9♤
「……明日、やっと休みなんだ。
せっかく大阪に来たんだから、どこか出かけないか?」
ベッドで隣に横たわる妻に、声をかけた。
「行ってみたいところはないのか?
車もあるし、どこへでも連れてってやるぞ」
豊かで柔らかな髪を弄びながら訊く。
大阪からのドライブは府内だけでなく、阪神高速の湾岸線で神戸、第二京阪で京都、その先京滋バイパスを使えば琵琶湖、さらに第二阪奈で奈良、阪和道で和歌山と選り取り見取りだ。
「……うーん……そうねぇ……」
なんだか、気乗りしてなさそうだ。
「……紗香?」
引き寄せて、顔を覗き込む。
とろーんとして、子どもの気配が漂っていた。
もしかして、眠いのか?と思ったら、次の瞬間、くーっと眠っていた。
「おいっ……まだ寝るなよっ」
焦ったおれは、彼女をゆさゆさと揺さぶる。
だが、いったん眠りについた紗香は起きない。
夕飯のときには確か、期間限定の氷結 ルビーグレープフルーツを一本しか呑んでなかったはず。
彼女は割と酒好きで、酔うとご陽気になってますますかわいいのだが、そんなに強くないため眠たくなるタイプだ。
だからといって、さすがに缶チューハイ一本くらいで潰れるわけはない。
……明日休みだし、おれだって酒もセーブしたし、今夜はおまえを、思い存分抱こうと思っていたのによっ。
おれは、はぁーっと盛大にため息を吐いた。