卒業





どれくらいたったのだろう。




涙も枯れたころ、意識が朦朧とするなか、ふと、時計を見た。






……あ、約束の時間







気が付くと約束の時間から30分以上過ぎていた。






瀬野尾くん待ってるかな…………






思考が回らない頭でそんなことを考える。
私は鞄の中からおもむろに携帯を取り出した。






新着メール3件






開いてみる。
どれも瀬野尾くんからだった。







【 お店着いたよ
中で待ってるね~ 】






【 おーい
遅れてくるの?
美味しそうな魚、食べちゃうよ~
連絡まってるよ~ 】







【 ねえ
どうしたの? 】








さっき枯れたはずの涙が、またジワリと溢れてきた。







瀬野尾くんの笑顔が浮かんでは消え、瀬野尾くんの少し鼻にかかった高い声を思いだし、瀬野尾くんのふにゃりとした優しい顔が浮かんでは消え………











私は溢れ落ちる涙で霞む視界の中、震える手で返信のメールを打った。








【 ごめん、ちょっと体調が悪くて。
今夜はムリそう。ホントごめんね。】







たったあれだけのことで、たった彼女といる瀬野尾くんを見ただけで、私は瀬野尾くんの顔をまともに見る勇気が無かった………。



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