卒業
外に出ると春の陽射しが感じられ、とても気持ちが良かった。
『じゃ、付き合ってくれたお礼にランチ行こっか~』
「あ~お腹すいたぁ~。いこいこ。」
そう
私達の会話には男女間によくある “トキメキ語録” は存在しない。
私の瀬野尾くんへの話し方は、少しも可愛くない受け答えかただと、自分でそう思っている。
ううん、本当は意識して自分でそうしている……
長年連れ添った友達だから…………。
私たちは近くにあったオムライス屋さんに入った。
何となく入ったけれど、とても人気店のようで、すごく混みあっていた。
店員さんが今すぐ案内できる席が、窓際のカップルシートしかないと言ってきた。
すると瀬野尾くんはすぐに
『いいです、そこでー』
って…………
席に案内された私達。
そこには二人がけのソファーがひとつ、窓際に設置されたのテーブルに向いて置いてあった。
ラブラブのカップルにとってはこの上ない幸せな席なんだろう……。
そんなソファーに何の躊躇いもなく座った瀬野尾くん。
『あーー、楽チン楽チン!』
おやじか(笑)
私も座ろうとソファーを見ると、両足をおっぴろげて座っている瀬野尾くん。
まただ(笑)
顔は女の子みたいなのに、この足癖の悪いところ。
「ちょっとー、足!」
少し怒ったふりしてそう言うと
『あ、わりい、わりい』
とおどけながらも足を閉じてくれた。
私は瀬野尾くんの左側に小さくなって座った。
大丈夫、大丈夫
こういうの慣れてるから
うん、確か昔もあったあった
私は自分にそう言い聞かせる。
店内を見渡すとカップルがたくさんいた。
みんな何やら楽しげにお話ししている。
そんな彼らの幸せオーラをひしひしと感じ、私は少しだけ胸が苦しかった。
私達もカップルに見えるのかなぁ……
またそんなこと考えてしまう。
私は右隣にいる瀬野尾くんをチラリと見た。
綺麗な横顔……
鼻筋が通っていて、唇なんて私より形良くって色っぽい。
あ………まつげも長いんだ……
窓から差し込む太陽の光で、もともと色白の瀬野尾くんの肌はより白く透き通っていた。栗色のふわふわとした髪もいつもより明るく見える。
彼は友達なんだよ
聞かれてもいないのに
誰かに言いたくなる
かっこいいでしょ、綺麗でしょ
スタイルもよくてモデル見たいでしょ
彼は私の親友なんだよ
もうね、10年の付き合いになるんだ
私達、超仲良しなんだよ
男女の友情って無いと思ってる?
あるある!
あるよ
ほら、私達みたいにね…………
なんてね
ま、少なくとも瀬野尾くんは、私との間に友情が成立していると思っているんだろうな。
わたしは?
わたしは……
わたしは……
たぶん、10年
瀬野尾くんに
片思い……してるよね
でも大丈夫。
こうして友達として私達上手くいってる。
瀬野尾くんは私のこと頼りにしてくれてる。
私は瀬野尾くんの側にいたい。
だから、これで友情成立。
これでいいの