卒業



こうして無事に私の写真の腕前も上がってきたところで、今日の練習は終わりを迎えた。




ほんの1時間ほどの時間だったけれど、私にとっては、とてもとても長くて幸せな時間だった。






瀬野尾くんはカメラをリュックにしまうと




『そうだ、携帯もってる?』


「え、あ、うん……」




私は鞄から携帯を取り出した。



『また大事な連絡事項あるかもしれないから、連絡先教えてくれる?』



あ、そっか。委員同士、まだやること山積みだしね。



「……はい、これ」



私は自分の連絡先を瀬野尾くんに教えた。









『ありがと。じゃ、本番はよろしくねー』



そう、簡単な言葉を残して、ふらっと瀬野尾くんは消えてしまった。








あまりにもあっけない終わりかたに、私は夢を見ていたのではないかと、不思議な感覚にとらわれた……









それでも確かに………




私の胸のかなには、レンズ越しに見た素敵な瀬野尾くんがたくさん保存されていた……











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