卒業






『どのオムライスにする?』


メニュー表を見ながら瀬野尾くんが頬杖をついて私をのぞきこむ。






近いっ…………






何年一緒にいても、こう顔を近付けられるとドキドキしてしまう。



瀬野尾くんはそんなこと気にもせず、さらに近づき、肩をくっつけてきた。







ドキドキ……







「あー、じゃこれっ」



この状況を脱するため素早く決めた私。



『いいね~それ。じゃ俺も~。』



まただ。



食べに来るといつもこんな感じ。
瀬野尾くんは私と同じが多い……
適当なのか面倒臭いのか……














オムライスを注文し待っている間、私は窓の外の景色を見ながら瀬野尾くんに聞いてみた。



「ねぇ、今度はさ、どんな彼女なの?」



チラリと瀬野尾くんを見る。


瀬野尾くんは美味しそうに喉を鳴らしながらゴクゴクお水を飲んでいる。


水を飲むたびに上下する色白の喉がやけに色っぽい。


瀬野尾くんはいつもマイペースだ。
今も私の話を聞いているのかいないのか……。






「ねぇ?どんな人?」



もう一度聞いてみる。



瀬野尾くんはコップを机に置き、だるそうに大きく伸びをしながら言った。



『んーん、どんな人? だろうねー』



まただ。
すぐにはぐらかす。
でも、いつものこと。




ま、別に瀬野尾くんがどんな人とお付き合いしようが、私には関係ない。




瀬野尾くんには今までにも何人か彼女がいた。
あまり良くない噂も聞いた。
大学生の頃なんてクラブでバイトしていたとも聞いた。



でも、私は平気だった。
だって瀬野尾くんは変わってなかったから。


彼女がいるときでも、こうして私は呼び出され、瀬野尾くんの用事に付き合ったりしてきた。


彼女さんの気持ちを考えると申し訳なく思う。
それは本当に思っている……




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