卒業
『ね~え~』
突然、声をかけられてビクッとした私。
振り返ると瀬野尾くんがいた。
……え
『お昼食べてないでしょ~』
そういって差し出したのは隣のクラスの催し物、たこ焼きだった。
『これ食べなよ』
「え、あ、いいよ、そんな悪い……」
『悪いのは交代のやつだろー』
瀬野尾くんは分かっていたんだ。
私が一人当番を押し付けられていたこと……
全然つらいなんて思っていなかったのに
全然これでいいと思っていたのに
瀬野尾くんの優しい言葉が、私の心の糸を震わせた
…………
鼻の奥がつーんとしてきた
じわじわ涙が出そうになる
でも、私は泣きそうになるのをぐっと我慢して、笑顔で答えた
「うん、ありがとう」
『素直でよろしい。じゃ食べよっかー』
瀬野尾くんはフニャッと笑顔になると、受付の席にどかっと座った。
「え、瀬野尾くんそこ受付の席……」
『んん? そうだけど~?』
「え、なんで座ってるの……」
『えーここ座ったらダメなのー、いいじゃん固いこと言わないでよー! それより、たこ焼き一緒に食べようー』
子供みたいに膨れっ面したかと思ったら、その後にはすぐに嬉しそうな顔をして、たこ焼き、たこ焼きと言う瀬野尾くん。
あなたのその次から次へと
想像もつかない行動と表情と言葉と…………
もう、私はあなたの虜です…………