卒業
もうすぐ4時になろうとしている。
校内アナウンスが流れた。
ーー各クラス、閉店の準備をお願いします
ーー4時には閉店となります
ーー戸締りをして下校してください
ーーなお、この後、校庭で後夜祭があります
ーー参加する方は校庭に集まってください
『さ、片付けよっかー』
「うん」
終わっちゃった……
楽しい時間はどうしてこんなにも、早く過ぎるのだろう……
私はパソコンやプリンターの電源をおとし、窓を閉め、ゴミなどを拾い終わった。
よし、帰ろう。
そう思った時、
『あー、いいこと考えたー』
瀬野尾くんが何やら思いついたみたい。
カメラを机の上にセットし始めた。
そして、カメラのスイッチを押した。
…………?
私が瀬野尾くんの行動をボーッと見ていると、瀬野尾くんがニコニコしながら私にかけより、突然、私の腕を取り走り出した。
え!なに、なに……
私は不意に捕まれた腕にドキドキしながらも、瀬野尾くんにされるがままついていった。
そこは、今回人気ナンバーワンのパネルの前だった。
ハート型にくりぬかれたパネル。
ハートの中に入る形で記念写真を撮るものだ。
ハートの下には学校祭名と今日の日付が書いてある。
『ほらほらー、急いでー(笑)』
そう言うと、瀬野尾くんはとっても楽しそうに笑い、私を無理矢理ハートの中に押し込んだ。
……え、え
『ねっ、カメラ、カメラー!もうすぐシャッターおりるよー!』
「え、え!」
私は反射的にさっき瀬野尾くんがセットしていたカメラを見た。
と同時に、パシャッとシャッター音が、二人だけの静かな教室に響き渡った。
『よーし、記念撮影完了ー』
………………あ
『写真撮ってなかったでしょー?これで学校祭の記念写真がとれたねー。うん、よかったよかったー』
あまりにも一瞬の出来事に、私はボーッとしてしまった。
『あー、パソコンも、プリンターも電源落としちゃったねー。 残念ー。じゃ、あとで写真印刷したら渡すねー』
「あ、ありがとう」
瀬野尾くんのサプライズに、私は嬉しくて涙がこぼれそうになった。