卒業
学校祭が終わり、3年生は受験期間に突入した。
あの楽しい学校祭の出来事はまるで、夢であったかのような気さえする。
1週間たった今でも、瀬野尾くんとの学校祭での出来事は、ふわりふわりと記憶の片隅で甘く優しく住み着いていた。
放課後、瀬野尾くんが私の席にやって来た。
『ほぃ』
そう瀬野尾くんから差し出されたもの。
それは、学校祭の最後に、二人で撮った記念写真だった。
…………!
写真を見るとハートの中で固まる私。
そして、私の横には…………
私にキスをしようとしているようなポーズの瀬野尾くん。
「…………え」
私が驚いていると、瀬野尾くんは私の耳元に顔を寄せ小声で言った。
『あらぁ~やっぱり気付いてなかった。こっそりキスしちゃえばよかったかなー 笑』
………………!
そう言ってクククッと可愛く笑うと、瀬野尾くんは友達のところへひょこひょこと行ってしまった。
私は顔が真っ赤になった。
耳まで、いや身体中が熱い!
鼓動なんて高速連打している!
私はもう一度ドキドキしながら写真を見た。
瀬野尾くんは、私の右頬にまるでキスをするような仕草をしている。
瀬野尾くんと私の距離は、ギリギリって感じでもない。
でも、でも、でも、でも…………
なんなのー
こんな、こんなことって…………
私は慌てて写真を隠した。こんな写真を誰かに見られたらどんなことになるか…………
その日、私は一日中上の空だった。
学校祭で素敵な思い出が出来たと浮かれていたところにこの写真……
瀬野尾くんいったい何を考えているのか、全然わからないよ……
それでも私は嬉しかった。
瀬野尾くんと近づけたこと……
瀬野尾くんと思い出がたくさん出来たこと……
大切にしよう
私の宝物……
夏が終わる頃には、私のなかで瀬野尾くんを思い出すスイッチがたくさん出来ていた。
バスガイド
カメラ
コスモス
学校祭
たこ焼き
そして、写真……
学校祭は私にとって、最高に幸せな思い出の日になった……