卒業




学校祭が終わり、3年生は受験期間に突入した。




あの楽しい学校祭の出来事はまるで、夢であったかのような気さえする。




1週間たった今でも、瀬野尾くんとの学校祭での出来事は、ふわりふわりと記憶の片隅で甘く優しく住み着いていた。















放課後、瀬野尾くんが私の席にやって来た。




『ほぃ』




そう瀬野尾くんから差し出されたもの。

それは、学校祭の最後に、二人で撮った記念写真だった。







…………!








写真を見るとハートの中で固まる私。

そして、私の横には…………




私にキスをしようとしているようなポーズの瀬野尾くん。





「…………え」





私が驚いていると、瀬野尾くんは私の耳元に顔を寄せ小声で言った。




『あらぁ~やっぱり気付いてなかった。こっそりキスしちゃえばよかったかなー 笑』




………………!




そう言ってクククッと可愛く笑うと、瀬野尾くんは友達のところへひょこひょこと行ってしまった。








私は顔が真っ赤になった。
耳まで、いや身体中が熱い!
鼓動なんて高速連打している!




私はもう一度ドキドキしながら写真を見た。

瀬野尾くんは、私の右頬にまるでキスをするような仕草をしている。


瀬野尾くんと私の距離は、ギリギリって感じでもない。


でも、でも、でも、でも…………


なんなのー
こんな、こんなことって…………











私は慌てて写真を隠した。こんな写真を誰かに見られたらどんなことになるか…………










その日、私は一日中上の空だった。








学校祭で素敵な思い出が出来たと浮かれていたところにこの写真……






瀬野尾くんいったい何を考えているのか、全然わからないよ……






それでも私は嬉しかった。

瀬野尾くんと近づけたこと……
瀬野尾くんと思い出がたくさん出来たこと……






大切にしよう

私の宝物……














夏が終わる頃には、私のなかで瀬野尾くんを思い出すスイッチがたくさん出来ていた。








バスガイド


カメラ


コスモス


学校祭


たこ焼き











そして、写真……









学校祭は私にとって、最高に幸せな思い出の日になった……







< 38 / 87 >

この作品をシェア

pagetop