卒業
『あれっ、もしかして……鈴村さん……?』
不意に後ろから声をかけられた。振り返るとそこにはすっかり大人っぽくなった朝倉くんがいた。
わぁ懐かしい……
「朝倉くん?」
『おうっ! 久しぶりっ!』
「やだ、なんか雰囲気変わったね」
『そお、変わったかな 笑』
「うん、だって高校生の頃はめちゃくちゃ尖ってたよー」
『うわっ、それマジで恥ずかしい!忘れて!』
朝倉くんは高校生の頃は本当に尖っていた。クラスの中では一匹狼だった。髪も金髪のロン毛で、ひときわ目立つ存在だった 。
先生も手を焼いていたんじゃないかな。
だからよく、先生から朝倉くんを呼んでくれとか、朝倉くんにこれ渡してとか………まあ、何だかんだ雑用頼まれていたな。
個人的に親しく話したことはなかったけれど……
正直、ちょっと恐かったし……
それが今ではこんなに柔らかい笑顔と、フランクな対応が出来る爽やかな素敵な男性になってる。
髪もおとなしいブラウンで、大人っぽいショートヘアだけれど前髪があるせいか、少し幼く見える。
『ね、ここ座っていいかな?』
そこはさっきまで朋子が座っていた席。でも、彼女は幹事で飛び回ってるから……
「うん、どうぞ」
『あざーーす』
なんか朝倉くんの調子のいい話し方に、私の気持ちが和らいでいった。
『あ、なにこれー? 超おいしそうだけど!』
朝倉くんは目の前にある料理を見て、テンションが上がっているよう。
その様子がとても高校生の頃からは想像もつかなくて、目の前の朝倉くんがあまりにも可愛くて、私は一人笑っていた。
そんな私を見た朝倉くんは驚いたように言った。
『 鈴村さん!なんか雰囲気変わったよねー。高校生の頃は超ガリ勉って感じでさ。 』
「確かに、ガリ勉だったかも 笑」
『めっちゃ近寄りがたかったわ 笑』
だよね……
友達って呼べるのは朋子くらいだったし………
『あ、でもさ昔は昔!今はめちゃいい感じだよ!』
前向きな言葉をくれる朝倉くんがとっても素敵で、また自然と笑みがこぼれた。
『ほらほら、キレイなお姉さん。どーぞ!』
そんな風に朝倉くんはふざけてお酒を注いでくる。なんだか朝倉くんのテンポにうまく巻き込まれた私。でも、今はそれが心地よかった。
『おっ!結構飲める口ですかー!』
朝倉くんがすぐにまたお酒を注ごうとする。
「ちょちょっと! 笑」