卒業
あまりの衝撃に私はバランスを崩し、後ろに転びそうになった。
その瞬間、私は強く抱きしめられた。
目を開けると、私は朝倉くんの腕の中にいた。
『ごめん!大丈夫!』
私は朝倉くんの片腕でしっかりと抱きかかえられていた。目の前には朝倉くんの顔がある。
………………!
この状況に息が止まりそうになった。恥ずかしくて何も言葉が出てこなかった。
『ほんと、ごめんね!』
朝倉くんは慌てながら、本当に申し訳なさそうな顔でそう言うと、腕をゆっくりと離した。
私の鼓動はドキドキを繰り返している。
男の人の腕に抱かれたことなどなかった私は、激しく動揺した……
筋肉質で力強い腕の感覚。一瞬ぶつかった、朝倉くんの厚い胸……
そして、ふんわりと匂った、朝倉くんの甘い香り。
………………。
『なんかさ、急に走っていっちゃって……。席に戻ってみたら何処にもいなくて。で、ビックリして……。』
朝倉くんは、瀬野尾くんのこと、そして私の涙の訳は聞いてはこなかった……
「…………私こそ、急にいなくなったりしてごめん。でも、外の空気をすったら気分よくなった。心配かけてごめんね。」
そう誤魔化した……
ごめん…………朝倉くん…………
すると朝倉くんは大袈裟に胸に手を当てて笑った。
『よかったあー』
と言っておどけてくれた。
『お店の中、戻る?』
朝倉くんはお店の方を親指で指さし、私を気にしてくれる。
「うん、大丈夫」
『ん!よし、じゃ戻ろっか!』
そう元気よく言って、朝倉くんがドアに手を伸ばした時だった。