卒業



すると朝倉くんが真剣な眼差しで言った。



『高校生の時の瀬野尾は孤独だったんじゃないかな。たった一人の家族の母親が倒れてさ…………俺さ、高校生の時にあいつの目を見たとき、自分と同じ感じがしたんだ……俺もさ、まあまあ孤独だったから…… 』



………………。




『で、瀬野尾のさっきの目。昔と全然変わってなかった…………。』




………………。




『あいつ、何か隠しているんじゃないかな。本当は終わりにしたくないとか…………分からないけど。やっぱりちゃんと自分の気持ちを伝えて、瀬野尾の気持ちも聞くべきだよ。だから、こんな終わりかた良くないよ』




「でも…………。」




『最後に本当の気持ち伝えよう。ね。』






……朝倉くん






『ダメだよ10年を無かったことにしたら。大切な時間だったんだろ?』



………………




私のなかで気持ちが揺らいだ。




瀬野尾くんに私の気持ちを伝えたい……
そして、瀬野尾くんの気持ちも知りたい……



その結果、笑われてもいい、バカにされてもいい、怒られてもいい。



さっき瀬野尾くんに嘘をついたとき、心が張り裂けそうになった、あんな気持ちになるくらいなら。




もう、嘘はやめよう。







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