卒業
と、朝倉くんがポケットに手を突っ込み、夜空を仰ぎながら呟いた。
『あー、寒い。春の夜風は冷たいね~!お、今日は月がめちゃデカく輝いてる!』
私もつられて空を見上げた…………
大きくて明るい満月だ…………
……あ
私はあることを思いだし朝倉くんに聞いた。
『ねえ、今夜の月ってスーパームーン?』
すると朝倉くんは、そうそうと言うように、首を小刻みに縦に振った。
きっとそうだ。
私のなかで、ひとつの記憶がよみがえった。
私は慌ててカバンからスマホを出し、瀬野尾くんとのメールを開いた。
そこには過去のメールがぎっしりと残っていた。
メール画面を下へ下へスクロールする。過去のやり取りを探す。
その度に目に飛び込んでくる、過去の瀬野尾くんからのメール。
【 今日は焼き肉たべたよー】
【 雪ふったね!気を付けて仕事いくんだよー】
【 寒いからお腹出して寝るなよー】
【 髪伸びたー、切りにいくのめんどいー】
スマホに涙が落ちる。それでも私はメールを下へ下へスクロールした。