卒業


と、朝倉くんがポケットに手を突っ込み、夜空を仰ぎながら呟いた。



『あー、寒い。春の夜風は冷たいね~!お、今日は月がめちゃデカく輝いてる!』




私もつられて空を見上げた…………

大きくて明るい満月だ…………





……あ






私はあることを思いだし朝倉くんに聞いた。


『ねえ、今夜の月ってスーパームーン?』


すると朝倉くんは、そうそうと言うように、首を小刻みに縦に振った。



きっとそうだ。

私のなかで、ひとつの記憶がよみがえった。



私は慌ててカバンからスマホを出し、瀬野尾くんとのメールを開いた。


そこには過去のメールがぎっしりと残っていた。


メール画面を下へ下へスクロールする。過去のやり取りを探す。





その度に目に飛び込んでくる、過去の瀬野尾くんからのメール。




【 今日は焼き肉たべたよー】


【 雪ふったね!気を付けて仕事いくんだよー】


【 寒いからお腹出して寝るなよー】


【 髪伸びたー、切りにいくのめんどいー】






スマホに涙が落ちる。それでも私はメールを下へ下へスクロールした。





< 63 / 87 >

この作品をシェア

pagetop