卒業


「あった」



朝倉くんが、何なに!と、知りたくてうずうずしている。




これだ。


去年スーパームーンだったときに、瀬野尾くんから送られてきたメール。





【 ねえ、空を見て。すごく綺麗なお月様だよ!今夜はスーパームーンだって!】




このメールと一緒に、瀬野尾くんはスマホで撮った月の写真も送ってきてくれた。




そして、その写真はあの場所で撮られたもの。夏の終わりにコスモスが一面に咲き乱れていた、公園にある高台だ。





「瀬野尾くん公園にいるかもしれない。 」


そう朝倉くんに伝えると


『よっしゃ、一緒に行こっか!』


そう元気に言う朝倉くんだったが、私は不思議で仕方がなかった。


どうして朝倉くんここまで一緒に瀬野尾くんのこと…………


そう思ったときにはそれは言葉となっていた。




「朝倉くんどうして……」




私が不安げに問いかけると、朝倉くんは恥ずかしそうに答えてくれた。



『俺さ、高校生の頃は瀬野尾みたいに人気もあって勉強もできて、すかした完璧な奴が嫌いだったよ』



………………うん




『だからつい、さっきは瀬野尾と悪い空気出しちゃったけど、本当は瀬野尾とは仲良くなりたいんだ。』




……………え




『あ、あいつってさ、なんか気になるじゃん』



「うん」



『それに、瀬野尾を探すの一人じゃ心細いだろ? なんて!』



「…………うん。ありがとう……」



朝倉くんの優しさが嬉しかった。

そして、朝倉くんが瀬野尾くんのことを、心配してくれることが何より嬉しかった。






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