卒業





……やだ……!






……やだ瀬野尾くん、違うの……!









私は頭が真っ白になって、無我夢中で初めて自分から瀬野尾くんへ電話をかけた。










ーー電源が入っていないか

ーー電波の届かないところにいます










機械的なアナウンスに愕然とする……






…………やだ



…………やだよ、瀬野尾くん!





今すぐ誤解を解きたい。今すぐ連絡したいのに、伝えられないもどかしさに目頭が熱くなる……








私は再びスマホを握り締めて駆け出した。朝倉くんも慌ててついてくる。









涙が次から次へとあふれでる。

呼吸が苦しい。



それでも私は止まることなく走った。そして、何度も何度も何度も心の中で、瀬野尾くんの名前を呼んだ。


瀬野尾くん……


瀬野尾くん……


いつも呼び慣れた名前なのに、もう呼び掛けることが出来なくなると思うと苦しくて苦しくて、何度も何度も何度も瀬野尾くんの名前を叫んだ……。







< 68 / 87 >

この作品をシェア

pagetop