卒業
公園に着くと高台へと急いだ。息が上がり苦しい。本当に瀬野尾くんはここにいるのだろうか。
公園には所々に街灯が寂しく灯っている。しかし街灯の灯りだけではとても頼りなく、辺りは薄暗闇に覆われていた。
足がすくむ。高台までの遊歩道は想像以上に薄暗い。
『俺が先に行くから、大丈夫。ついてきて』
ふいに朝倉くんが私の不安に気づいたのか、私の前に来て優しくそう言った。
「朝倉くん…………ありがとう」
私は朝倉くんの大きくて逞しい背中を見ながら、ゆっくりと歩いた。
朝倉くんは自分のスマホの明かりで、私の足元を照らしてくれた。
途中、小枝が落ちていたり、雑草が飛び出していたりととても歩きづらい。そんな場所では必ず、朝倉くんが声をかけてくれた。
突然、茂みが開けた。
高台の上まで来たのだ。
どこ…………!
どこにいるの瀬野尾くん。本当にここにいるの。
それすら分からないのに、私は必死に周りを探した……