卒業


公園にある高台はそれほど広くない。生くんがいればすぐに見つかるはず。しかし高台には街灯がなく、頼りになるのは月明かりだけだった。


私はスーバームーンを見て祈った。




~瀬野尾くんがいますように~









私たちは高台の端から順に見て回った。そして、私たちが探し始めた端とは反対の端に………






瀬野尾くんは、いた…………







瀬野尾くんは お月さまが一番よく見える場所にいた。



高台の一番端っこ、胸ほどの高さのある柵にもたれ掛かるようにして、夜空を仰いでいる姿の瀬野尾くんを見つけた。



暗闇でその顔ははっきりと見えない。けれど、そのシルエットで瀬野尾くんとわかった。



少し猫背で細い体のライン。すらっとした長い足。そして、うつくしい横顔…………。






瀬野尾くん……








『ほら、行って。がんばって』



朝倉くんが囁くように、優しく私の背中を押してくれた。



「…………うん。ありがとう」








私はゆっくりと瀬野尾くんに近づいた。



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