卒業

私は10年分の想いを込めて、ありったけの勇気を振り絞って、瀬野尾くんの胸のなかで伝えた。





「…………私……瀬野尾くんのことが………好き……」




………………




………………




瀬野尾くんが黙る。私は苦し過ぎて逃げだしたい気持ちになった。



「瀬野尾くん、ごめん、変なこと言って……!」



すると、瀬野尾くんはさらに腕に力をいれて、私を強く抱き締めた。




………………




『……どうしようもなく…………好きなのはおれだよ』




…………え



………………うそ




そう言うと瀬野尾くんは私をみつめた。そして、苦しいほど切ない声で言った。




『……おれの頭ん中、いつもお前でいっぱいだから』



………………




私は瀬野尾くんに何か言わなくちゃと思うのに、胸が苦しくて上手く言葉が出てこない。




ただ、ただ、嬉しくて…………

瀬野尾くんの言葉が信じられなくて…………




かわりにまたポロポロと涙がこぼれた。



『また泣く』



そう言うと瀬野尾くんはふんわりと笑った。




なにがどうして、私が瀬野尾くんに告白されているのか、状況がいまいち飲み込めない。



もう頭のなかはぐちゃぐちゃだ。



< 75 / 87 >

この作品をシェア

pagetop