卒業
第二章 現実
ある日の夜、瀬野尾くんからメールが来た。
【 久しぶりに飲みに行こうよ
なんか美味しいもの食べよう
忙しい?
連絡まってるね 】
今度のお誘いは美味しいもの食べながら飲もう、か。
そう言えば、ちゃんとネックレス渡したかな?
彼女さん喜んだのかな?
瀬野尾くんから連絡が来るのは、この間ジュエリーショップへ行った以来。
私達の会う回数はおおよそ月に1回くらい。
その会う約束もだいたい瀬野尾くんから。
彼女がいると分かっているから、私から瀬野尾くんには連絡しない。
そして私は絶対に瀬野尾くんのお誘いは断らない。
その理由はひとつ。
会いたいから…………
それだけ。
こんなんだからかな。瀬野尾くんの都合のいい女になっている。
自分でも分かってる。こんなことじゃダメだって。
そもそも可愛く片思いしている歳じゃないし。まったく10年も片思いとか、相手が知ったら気持ち悪がるレベル。
そろそろ現実を見つめないと………
分かってる。
もう瀬野尾くんから卒業しなきゃって。
それでも…………
瀬野尾くんに彼女がいても、諦めきれないのは………
瀬野尾くんが変わらず私に優しいから
瀬野尾くんが変わらず私に笑顔をくれるから
なんてね…………
瀬野尾くんのせいにしている。
最低だな、私。
ただ瀬野尾くんのことが好きなだけ。
一緒にいたいだけ。
瀬野尾くんの笑顔を、瀬野尾くんのいろんな顔を、すぐ近くで見ていたいだけ。
瀬野尾くんの声を耳元で聞いていたいだけ。
告白すれば?
そう思うよね………
でもね、一緒にいすぎたんだよね。
私たちは長い時間を友達として過ごしてしまったの。
このバランスを壊したくない。
瀬野尾くんから離れたくない。
彼女になりたいなんて求めない……
もう求められない……
本音?
本心?