卒業
幸せな日々
同窓会の翌日、朋子から電話があった。
『昨日は大丈夫だった?気分が悪くなって帰ったって、朝倉くんが言ってたけど。』
「え……あ、うん。」
…………朝倉くん、あれから同窓会に戻っていたんだ
『朝倉くん、送ってくれたの?』
「え、あ……ううん。…………一人で帰った。」
『そっかー、朝倉くん、一緒じゃなかったのねー。 』
「どうして?」
『朝倉くん、高校生の頃、あんたのことめっちゃ気に入ってたから 』
「……え?」
『 全然気づいていなかったの? うっそー!だから私、わざわざ昨日の席代わってあげたのよー。10年目の恋が動き出すと思ったのになー』
「高校のころの話でしょ~。もう10年もたってるよ~。それに、ずいぶん朝倉くんかっこよくなっていたから、彼女いると思うな。」
私はそう言いながらも、昨日の朝倉くんの優しい笑顔や元気づけてくれた言葉を思い出していた……
『ねえ、ねえ。ふったでしょ?朝倉くんのこと。彼ね、戻ってきてから暗かったもの。なんかおかしいなぁ~と思ってたのよね。』
「……え」
『気になって、朝倉くんにどうしたの?って聞いちゃった。そしたらさ、何て言ったと思う?』
「え、なに?何て言ったの?」
『いい人やるのって結構しんどいんだね~。だって』
「…………。」
私は朝倉くんが、その言葉をどんな気持ちで、どんな表情で言ったのかと考えていたら、鼻の奥がツーンとして目頭が熱くなった……
そして、昨日の朝倉くんとの出来事が、次々によみがえってきた…………
久しぶりに会ったときの照れたような笑顔。
私を元気付けようとしてくれた、いくつもの言葉。
悩みを聞いてくれた時の、真剣な眼差し。
一緒に瀬野尾くんを探しに走り回ってくれた夜。
そして、私の背中を何度も何度も、優しく押してくれたこと……
……………………
朝倉くん…………
本当に…………ありがとう…………
私は手のひらで目を押さえ、涙をこらえた。
『どうした?聞いてる?』
「……うん、聞いてる」
『朝倉くん、完全に失恋だよ。かわいそうに……。ちょっとー、今度会ったときに、あの日に何があったのかしっかり教えてもらうからねー』
「……うん、分かった」
そのあとは、少し旧友の話をして、私たちは電話を切った。