卒業
パクッ!
キャッ!
瀬野尾くんが私の指をくわえようとした。
「ちょっとー起きていたのー」
すると瀬野尾くんは目をぱちりと開けて、ムスッとした顔をした。
そしてぷりっとした唇を尖らせて、ベッドに横になったまま、私においでおいでをする。
「なに?」
私は動かなかった。
瀬野尾くんのことだ、きっとまた何か企んでいるに違いない。
私が近寄ってこないからか、瀬野尾くんは諦めたように話し出した。
『電話。聞こえたよー。朝倉がなんだって?』
「うそ、聞こえてたの。地獄耳ー」
そう意地悪く言い返すと、瀬野尾くんはムクッと起き上がった。
『朝倉がなんなのー。かっこよくなったとか言ってたー。あと、キュンとかして泣きそうになってたりしてたー』
………………
『あーーー図星ーーーー』
そう言うと瀬野尾くんはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、私に飛びかかってきた。
「きゃっ!ちょっと!」
私は瀬野尾くんにものの見事に押し倒され、そのまま羽交い締めにされた。瀬野尾くんの長い手も、長い足もぐるッと私に絡み付く。
「ちょ、ちょっとー、苦しいー 笑」
『あーー、もう、ぜったい、ぜーったいに離さないぞ!』
瀬野尾くんはそう言って、笑いながら腕や足に力を入れる。顔は私の首もとに擦り付けるようにするからくすぐったい。
「……ひゃっ!もうっ! ちょっーー!ギブ!」
私は苦しいのとくすぐったいので、すぐにギブアップした。
すると瀬野尾くんはひょこっと顔をあげて、私の顔をのぞきこみ、にんまり嬉しそうな笑顔で言った。
『よーし、おれの勝ちね!』
そう言って手足をゆるめると、また、嬉しそうにする。
『じゃ、おれの言うこと聞くことーー』
「えー」
『えー、じゃないの 。はいここに座って。』
そう言って瀬野尾くんは床に座り、ベッドの上を手のひらでポンポンと叩いた。