レイニー・ハレーション
青空を浮かべた水面のデッキチェアーを前にして立ち止まる僕には、この景色に映らない雲行きを感じてはいたが、振り向いた彼女の中に迷いはなかった。

「あの手紙には続きがあるの…その前後には彼の知らない私へのメッセージが…」

彼女は右肩で結んだドレスの紐を軽く結び直しながら追憶の陰りを浮かべた。
時として黙り込むその長さは、僕にとっては短くもあり、彼女にしてみれば長く感じとれたのかもしれない…

「私は知り合ってからの5年間、ずっと彼の愛に不安を抱いていたの。
でも今まで信じてこれたのは想い続けられた自分を認めたくて…という気持ちがどこかにあったんでしょうね。
このままじゃいけないという、もう一人の私がいつもそれを責めていたから…
そんな気持ちを彼は本当に理解してくれているのか確かめたかったの。
でも待ち合わせの部屋に残されていた書き置きを見て思ったわ…もう、いいかなって…」

「残された書き置きには何が書いてあったの?」

「今になって、一度も話してくれなかった言葉が並んでいたわ。
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