レイニー・ハレーション
往路の途中、島に来たきっかけやそれに纏わるエピソードなど僕の話す自らのプロフィールについては無邪気に反応する彼女ではあったが、話の内容が彼との事に触れると何故か彼女の笑顔に陰りが出来る。
その度に僕は、会話の広がりそうな話題を選んだ。

「ここには何日ぐらい居るの?」

「島へは何しに来たの?」

彼女に抱く印象がそう感じなければ、こんな質問はもうすでにし終わっている筈だ。
彼女からは自己紹介もなく、そのプロフィールさえ明かそうとはしない。
それを気にする僕もおかしいが、ただ言える事は彼女は彼の所に遊びに来たという雰囲気には感じ取れないという事だ。
直接、彼女からは聞いてはいないが話題が彼の話になった時の過去形の多さが、僕にそう思わせたのかもしれない。
スタンリーコーストのトレードウインドが彼女のフレグランスとブレンドされ、ニュアンスな香りを演出する頃、流れる景色をサイドシートで見つめる彼女の視線が何を考えていたのか、その時はまだ知る由もなかった…
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