レイニー・ハレーション
フリーウェイを過ぎ、二人は予定よりも少し早く目的地へと着いた。
立ち並ぶパームトゥリーと熱帯植物が、美しいコラージュに似た原色のホテルに彩りを添えている。
僕はフロントのあるノスタルジックな洋館へと車を回し、客待ちのリムジンの後ろで彼女を降ろすと、対応に出たドアマンに事情を説明した。
モザイクの石段を上り、花をイメージした自動ドアへと消えて行った彼女が再びフロントから出て来るまでの間、僕は数分待っただろうか。
それに加え、手荷物らしきものも見当たらない。
特に慌てている様子ではなかったので気にしないつもりでいたが念の為、聞いてみた。

「えぇ…この通り、大丈夫よ」

彼女は自然な笑みを浮かべながらそう答えたきり無言だった。
それでも僕にはある疑問を拭い去る事は出来なかったが、やがてそれは以外な形で確信へと変わる。
週末の午後とはいえ、センター街を抜ける国道は渋滞もなく、エアポートまでの幹線道路もスムーズに流れていった。
国際線のターミナル前に到着したのは、彼女の時計で午後3時15分を少し過ぎた頃だった。
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